1000年後に
西暦3004年。もはやこの時代西暦と言う表現は存在しなかった。
しかし、せっかく別の暦の設定をやっていても
作者に計算用のプログラムなど作れるはずもなく、
まあ海外ドラマの吹き替えでも1マイルを1.6キロメートルと
変えている作品もあるので通貨を除いて
現在身の回りで使われている単位を使う事にしたほうが
いいということで作者のお馬鹿な部分をごまかしてしまうのだった。
と、言う事で3004年7月10日、とは言っても
ここは現在の地球の季節とはまったく違う環境設定がされていた。
しかしこれ以上無駄な説明をすると本編にいつまでたっても入れない。
「ツギーデちゃ〜ん。資料の準備できた〜?」
外見は10代後半の少女、だが実際の年齢は1300才以上の
魔導師ルフマモは、自分の肩の上にイケメン妖精を自称する
ミカズを乗せて秘書のツギーデを探していた。
「所でなんの資料を探しているんです?」
肩の上からミカズがルフマモに聞いた。そのときである。
「あら、ルフマモさん。どうしましたの?」
外見はほぼルフマモと同年代の女性だが、彼女も1000年以上生きていて
名前はツーザだった。
「ツーザちゃん。実はネー、1000年前の例の超凶悪犯の事についてちょっと……。」
「もしかしてあの懲役75万年の……。」
「なんか脱獄したらしいのよ。」
それを聞いたツーザは、
「い、今なんと……。」
「脱獄だけど。」
「あの超凶悪犯は当時の法律での極刑ですら遺族の誰もが満足せず、
天空城の最高裁で懲役75万年の刑が確定するまでも途方もない
時間をかけ、宇宙一警備が厳重なケイス65620の刑務所に
収監されていたという超凶悪犯が脱獄したということは、
繁華街のど真ん中に身長20メートルの巨人が突然あらわれる
ことよりはるかに危険と言えますわ。」
「ツーザちゃん、これだけ長い台詞を一気に言えたわね。
じゃ現場に行きましょう。」
「ルフマモさん。なんで私を差し置いて先に行くんですか。
一応私のほうが先輩なんですよ。」
「先に行くなんて言ってないわよー。いっしょに行きましょう」
「資料の準備が出来ました。」
二人の前に、道を塞ぐようにツギーデが現れた。ルフマモは、
「ごめんねー、急ぐから。今すぐに送れる分だけでいいから
携帯にメールしといて。」
「わかりました。お気をつけて。」
ツギーデはそう言ってルフマモたちを見送った。
「ケイス65620に到着したふたりはプリキュアではなく、とにかく
ツーザとルフマモの二人は、何度もエレベータを乗り継ぎ、
下へ下へと降りていった。「地下30万7階」という
表示を確認して実は二人といっしょにいた案内役の小柄な男は二人に、
「到着しました。私が同行できるのはここまでです。
向かいの扉にIDカードをかざしてください。」
そう言って小柄な割に顔が小さい男は二人が乗ってきたエレベータで
上へ行ってしまった。その直後、エレベータの階数を示す
電光表示が地下299000、8000、7000階と
めまぐるしい早さで変化していった。ツーザが、
「それにしても時間がかかりましたわね。」
「セキュリティの都合上、テレポート魔法は使用禁止なのよ。」
「それにしても、ルフマモさんのお供は、よく寝てますわね。」
ルフマモの頭の上では、ミカズが髪の毛につかまったまま、
爆睡していた。そのときである。
「ようこそ、最凶の地獄の刑務所へ。」
声をしたほうを二人が振り向くと、誰か立っている。先ほどの案内をしていた男らしい。ルフマモは、
「あんたさっきエレベータで上がらなかった?」
男は、
「いえ、私の名はカッコー、あなたがたを案内したのは弟のケッコーです。」
ツーザは、
「双子でしたか。」
男は、
「いいえ。」
そう言った次の瞬間、男の姿はまるで忍者の分身の術のように何人にも増えていた。
「改めて長男のカッコーです。」
「次男のキッコーです。」
「三男のクッコーです。」
「五男のコッコーです。」
「長女のソッコーです。」
ルフマモは、
「えーっ、一人欠けてるけど六つ子?しかも同じ顔で女の子いるし。」
「この後は、私が案内します。」
離れているとそうは感じなかったが、近づいてみると実は結構背が高かったソッコーが、
ツーザとルフマモをある扉の前へと案内した。
実はこの兄弟、ロシアの民芸品のマトリョーシカ人形のように、
姿かたちが同じでサイズが違うというよく考えてみると
なんか不気味というかシュールというか表現力の乏しい作者は
困ってしまう存在だったりするのだ。ツーザは、
「ここが、例の……。」
そういうとツーザの頭ひとつ上からソッコーが、
「違います。」
そういって音もなく開いた扉の向こう側に入った。
ツーザとルフマモの二人は彼女について入った。先に入っていたカッコーが、
「ようこそ、最凶の地獄のケイス65620刑務所へ。
地下30万71階は娯楽室、30万72階は機械室、そしてこの後さらに
このエレベータは一気に30万900階のスーパーウルトラデラックス独房へと参ります。」
ルフマモは、
「あのー、ソッコーちゃん、昔デパートに勤めていなかった?」
エレベータはまもなく地下30万900階に到着し、扉が開いた。
その直後ソッコーは名前どおり速攻でエレベータを出ると、
「こちらです。」
そういってエレベータを出たところの前の扉の所へ、というよりその階はルフマモたちが
さっき乗ってきたエレベータの扉と、2メートルくらいの廊下、
いや廊下というにはあまりにも短く、部屋に近いサイズだった。
とにかく部屋か廊下はもうどうでもいいくらい狭いところを挟んで、
向かい合うように配置されていた。エレベータとさほど変わらない広さの廊下で、
カッコーは次に入るべき扉を指し示した。ルフマモはツーザにだけ聞こえるような小声で、
「うーん、わざわざ案内してくれなくても、階数だけ言ってくれたらよかったような……。」
ルフマモがそう言っている内にカッコーは先ほどの扉を開け、中に入った。
ルフマモとツーザはあわててカッコーについてとビオラにでなく扉の中へ入った。
「まさかこういう展開になるとは思わなかったわねー。」
「ルフマモさん、もしかしてカッコーさん、階数を間違えたのでは……。
どう見てもこの部屋は物置……。」
カッコーはツーザの言葉を気にする様子も無く、
「この先は、セキュリティ上IDカードが必要になります。お忘れになっていませんよね。」
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