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2276号室
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第841話

石本は巨人のいる部屋に入っていこうとした。
それを部長があわてて止めた。
「ばかっ、そんなどうどうと入っていったらいくら小さくても気づかれるだろ!」
石本は、
「え? だって挨拶するんでしょ? 気づかれていいんじゃない。」
ダイちゃんは、
「ほんと何もわかってないな。
 天使ってやつのとこまでこっそりついていくんだから、見つかるわけにいかないだろ。」
ベルは、
「だがどうやって気づかれずについていくかが問題だな。」
部長も、
「そうだな。 やつが歩き出したら俺たちじゃ追いつけない。」
大ちゃんは、
「早くしないと行っちゃいそうだよ。」
部長は、
「時間がない。 見つからないように近づいてズボンのすそに捕まるぞ。」 

第842話

 巨人は、
「ん?なんだ?」
 部長は、
「まずい、もう気づかれたか?」
 しかし巨人は部長たちではなく何か上のほうを見ている。どうやら虫か
何かが飛んでいるらしい。
「チャンスだ、巨人が何かに気を取られているようだ。」
 ベルが言う。ダイちゃんが、
「全員行くぞ!遅れるな!!」
 ダイちゃんの掛け声で全員が巨人の足元に駆け寄り、
巨人のズボンのすそに飛びついた。部長が、
「全員いるか?」
「待ってよー。」
 石本が後から遅れてきた。ダイちゃんが、
「何やってるんだ。早く来い。」
 そのときである、全員が衝撃を感じる。そう、巨人が歩き始めたのだ。
「どうする?間に合わないぞ!!」
 フテンが言う。どんどん石本との距離が離れていく。
「今度ばかりは置いて……ん?」
 部長が言う。そのとき突然巨人が立ち止まった。
「何やってるんだ。早く来い。」
 ダイちゃんが言う。石本は、
「ハアハア、何とか追いついた……。」
 しばらくせりふのなかった博士。
「先ほどの虫か何かを払いのけようとしているのでしょうか、虫と言っても
 私たちから見れば……。」
「あれ?こっちに何か落ちて来る。」
 大ちゃんが言う。何かが煙を吹いて部長たちのほう向かって
ゆっくり落ちてくる。部長は、
「こっちに向かってくる。逆に巨人には動いてもらわないと困る。」
 すると再び先ほどのような衝撃、巨人は歩き始めたのだ。ダイちゃんが、
「絶対放すなよ。何見てるんだよ。」
「あれは……。」
 大ちゃんは落ちてくるものを見つめていた。そして、
「僕たちと同じ人間だよ。何か背負っているものが煙を吹いている。」

−ボンッ−

「あっ、爆発した!」
 それを見た石本が言う。大ちゃんは、
「乗っていた人はテレポートさせて助けたよ。」
 見ると、見かけない人が部長たちのすぐ横でズボンのすそに
つかまっていた。石本は、
「僕もこの方法を使ってくれたらよかったのに。」
 巨人は、部長たちに加えもう一人こびとがズボンのすそにつかまって
いるのに気づかないままどこかへ歩いて向かっていた。
大ちゃんに助けられた人は、
「アマーといいます。やっと天使に会う巨人を見つけ、
 小型の飛行装置でついていこうとしたら、虫と間違えられて……。」
 部長は、
「でも結果的に助かった。ん?もうついたのか?」
 巨人は歩くのを止めたようだ。巨人の前にはその巨人と比べても
更に巨大な扉があった。 

第843話

いくらこの巨人が巨大でも、さらに巨大すぎる扉は開けられないだろう。
部長たちは巨人がどうするつもりなのかズボンのすそで様子を見ていた。
巨人は巨大な扉に手を当てて押し開けようとした。
部長は、
「開けるつもりなのか? いくら巨人でも無理だろう。」
そう思っていると、巨大な扉の一部分が開いた。
ちょうどこの巨人が通れるほどの扉の枠が巨大な扉に仕掛けられていたのだ。
まるでペットの猫用の出入り口のようだ。
巨人はその扉を通って中に入っていった。
中に入ると、この巨人がこびとになってしまったかのように
周りのものがものすごく巨大だった。
もちろん今の部長たちから見たら、途方もなく巨大な世界だった。
巨人はもう少し奥まで進むと、
「天使様ー! 生まれ変わりの審査、よろしくお願いしまーす!」
と大声で叫んだ。
するとすごく遠くの方から地響きのようなのが近づいてきた。

ズシン・・・ ズシーン・・・ ズシィィーン・・・

地響きはどんどんでかくなって、巨人ですら立ってられないほど大きくなって止まった。
「んー? どこだぁ? 生まれ変わりたいってやつは。」
ものすごく上空の方から声が響いてきた。
巨人は上に向かって、
「天使様ー、ここです。 どうか、元の世界に返してください!」 

第844話

 するとはるか上空から先ほどの声、
「そこか、ところで生まれ変わったら自分の記憶がどうなるかわかった
 上で来ているんだろうな。」
「はいー。それも審査のうえで決定されると聞いております。」
「よし、わかったー。そこからそのまま前に進めー。何があっても
 指示があるまで止まるな。」
「はい、わかりましたー。」
 巨人は天使の指示通り歩き始めた。一方、部長たちもズボンのすそから
振り落とされないようにしっかりつかまっていた。
部長たちは先ほどの振動でも奇跡的に全員振り落とされずにいたのだ。
巨人は部長たちに気づくことなく歩き続けた。しばらくするとなんだか
足元が柔らかくなったと感じたが、指示がなかったので
そのまま歩き続けた。
「そこで止まれ。そのまま動くなー。」
 巨人は指示通りそこで止まった。その直後巨人はものすごいスピードで
上昇するエレベータに乗ったように感じた。部長たちも、
「なんだこれはー。」
「もうだめだー。」
「落ちるー。」
 何人かが巨人のズボンのすそから振り落とされる。
幸いにも落ちた所が柔らかく、誰も怪我をすることがなかった。
「では、今から審査を始めるぞー。」
 気がつくととんでもなく巨大な顔が巨人の目の前にあった。
巨人は更にとんでもなく巨大な天使の手のひらの上に乗り、そのまま天使の
顔の前に移動されたのだ。 

第845話

部長たちがズボンに捕まっている巨人から見てもとんでもなく巨大な顔。
部長から見たら視界いっぱい・・・いや、視界からはみ出るほど巨大すぎる顔だった。
ダイちゃんが、
「これが天使? イメージとぜんぜん違うんだけど。
 天使ってもっとかわいいもんなんじゃないの。」
大ちゃんは、
「ちょっとダイちゃん。 聞こえたらどうするの。」
でもダイちゃんは、
「あんなでかいやつに聞こえるわけないだろ。 この巨人にだって聞こえないよ。」
するととんでもなく巨大な天使が手の平の巨人に言った。
「それではさっそく審査をはじめるぞ。」
巨人は、
「はい、よろしくお願いしまーす!」
とんでもなく巨大な天使はもう片方の手で何かを取って巨人の前に持ってきた。
それはとんでもなく巨大な虫眼鏡のようだ。
部長たちから見たら、街ひとつ分ぐらいありそうなレンズだった。
とんでもなく巨大な天使は、しばらく巨人をじろじろと観察をしたあと
巨人に言った。
「よし、審査は終わりだ。 結果は、失格!」
巨人は信じられないといった表情で叫んだ。
「ええええー、そんな。 俺はこの世界で何も悪いことしてないんですよ。
 まぁ、最小族のやつらはけっこう潰したけど。
 でもそれはこの世界では罪にならないでしょう?
 それに別の審査でも余裕で通ってきたんですよ。
 ここにきて失格なんてありえませんよ。」
するととんでもなく巨大な天使は、
「脱獄を手助けしようとした罪だ。 失格どころか、お前はここで処刑だ。」
巨人は、
「ちょ、ちょっと待ってください!
 脱獄の手助けなんてしてません。 何かの間違いです!」
とんでもなく巨大な天使は、
「ではその足元のゴミどもはなんなんだ?」
巨人は自分の足元を見た。
「あっ、お前らさっきの店の。 いつの間についてきたんだ!」
とんでもなく巨大な天使は、
「このままお前を審査に通してれば、そいつらまでもとの世界に帰してしまうところだ。
 言い訳は聞かんぞ。 このまま握り潰してやる。」 

第846話

「お待ちください天使様、こいつらが勝手に……。」
 巨人が言うととんでもなく巨大な天使は、
「言い訳など聞かんと言ったろ!今すぐ処刑だ!!これはもう確定したのだ!
 覆ることはありえない!!」
 巨人は青ざめて、
「そ……そんな……。」
 とんでもなく巨大な天使は、巨人にもう一方の手を近づける。巨人は、
「お願いです、やめ……ぐわぁぁぁ!!!」
 巨人をとんでもなく巨大な天使の手が巨人の胸から下をしっかりつかみ、
自由を奪った、
「う……あ……。」
 巨人は必死でとんでもなく巨大な天使の手から脱出しようと、
両腕に全体重をかけてとんでもなく巨大な天使の指を押し返そうとしたり
していたが、どうしようもなかった。とんでもなく巨大な天使は、
「このまま一気に握りつぶしてもいいが、最後に言い残すことはないか?
 それだけは聞いてやろう。」
 とんでもなく巨大な天使がそういうと巨人を握るとんでもなく巨大な
天使の握る力が少し弱まり、巨人はかろうじて話すことが
できるようになった。巨人は、
「ああ……よく考えたら直接ここへ来ればよかったのにあんなところへ
 寄り道したのが間違いの元だった……。」
 とんでもなく巨大な天使は、
「ほう、それは残念だったな。あきらめることだ。」
 とんでもなく巨大な天使は再び巨人を握る力を強めた。巨人は、
「やっぱり死ぬのはい……あぅぅ!!」
 巨人はとんでもなく巨大な天使の手の中で声にならない叫び声をあげた。 

第847話

部長たちは、とんでもなく巨大な天使のもう片方の手の上にいた。
大ちゃんが、
「どうしよう。 あの巨人、僕たちのせいで潰されちゃうよ。」
でもダイちゃんは、
「別に仲間じゃないからいいじゃん。 あいつ僕たちをこき使ったんだし。」
大ちゃんは、
「でも潰されるなんて、かわいそうだよ。」
部長も、
「それに、あいつが潰されてしまえば今度は俺たちが潰されるぞ。
 あんな巨大なやつから逃げるなんて不可能だ。」
ダイちゃんは、
「しょうがないなぁ。 石本、あの巨人の体の周りで分裂して
 潰れないくらい硬くなれ。」
すると石本がふわふわと飛んでいって、とんでもなく巨大な天使の
握りこぶしの隙間から中に入っていった。
そして巨人の体を包み込むように分裂してものすごく硬くなった。
自分の手の中でそんなことが起こってるとは知らない、
とんでもなく巨大な天使は、
「では、潰すぞ。 久しぶりの処刑で興奮してきたぞ。
 フルパワーで握ってやる。」
握られてる巨人は恐ろしさで声も出ない。
半分意識を失いかけていた。
「ふんっ!」
とんでもなく巨大な天使は、さっき言ったとおりフルパワーで巨人を握った。
「・・・・・・。」
「・・・・・・?」
「あれ?」
「硬いぞ。 なんなんだこいつは。」 

第848話

 それを見ていた部長たちだが、
「あいつは潰されることはなくなったが、
 あのまま動けないんじゃないか?」
 ベルが言うと部長が、
「確かにそうだな。」
 そんなことなど知るよしもないとんでもなく巨大な天使は、
「よーし、もう一度……。うおりゃぁぁぁぁぁ!!」
 もういちどフルパワーで巨人を握りつぶそうとした。
「なんて硬いやった。どうなってるんだ?」
 さて、部長たちだが今の時点ではその様子を見ていることしか出来ない。
「握りつぶせなかったら、そのままあきらめるんじゃない?」
 ダイちゃんが言うとニショブが、
「あのでかいやつが疲れるかあきらめて握りつぶすのをやめたとしたら、
 次は何をすると思う?」 
「……。」
 全員が黙ってしまったが、しばらくして大ちゃんが、
「そうだ。巨大化は出来ないけど、
 逆に小さくすることならできるんじゃない?」
 さて、とんでもなく巨大な天使は、
「今度こそ……あれ?」
 しっかり握っているはずの巨人が自分の手の中から消えた。
「何が起こった?」
 とんでもなく巨大な天使はもう一方の手の小さな小さな部長たちを
確認しようとしたが、見つけられなかった。
「なぜみんな突然消えたんだ?」
 実は部長たちはとんでもなく巨大な天使の足元にテレポートしていた。
「助かったのはいいけど、あのでかいのが一歩でも動いたらおしまいだぞ。」
 ダイちゃんが言うと大ちゃんが、
「巨大化以外にも力に制限がかかっているみたい。
 全員をテレポートさせるのはここまでが精一杯だよ。」
 実は部長たちにメンバーがもう一人増えていた。
テレポートする直前に部長たちと同じサイズに小さくなった巨人がいた。
元巨人は、
「せっかく助かったと思ったのに何でこいつらと同じ最小族に……。
 もう永久にここから出らない。それどころかこいつらの言うとおり
 天使様が一歩でも動いたら踏み潰されて終わりだ。」 

第849話

とんでもなく巨大な天使は、さっき使っていた巨大虫眼鏡を持って
自分の手や床を調べ始めた。
「くそ、あいつらいったいどこに行ったんだ。
 逃がしたら俺がヤバイじゃないか。」
部長が、
「天使が動き始めた。 早く何とかしないと潰される・・・。
 そうだ、大ちゃん。 もうひとがんばりテレポートお願いできるか?」
大ちゃんは、
「でも、こんな巨大な天使からいっきに逃げられるほど遠くには行けないよ。」
部長は、
「遠くに逃げるんじゃなく、天使の足の上に行くんだ。
 うまくいけば、天使が帰る場所についていける。」
大ちゃんは、
「わかった。」
と言って念じ始めた。
すると、全員ぱっと消えてテレポートした。
ベルが、
「ここが天使の足の上なのか・・・。
 サイズ差がありすぎてよくわからないな。」
大ちゃんは、
「うん、確かに足の上に移動したよ。
 ほらあっちに足の指が見えるでしょ。」
自分の足の上でそんなことになってるとは知らない天使は、
「まぁいい、あんな小さなやつらがこの部屋からすぐに逃げられるわけない。
 あとで殺虫剤撒いとけば大丈夫だろう。」
そう言って探すのをあきらめてどこかに歩き始めた。
部長たちにとっては街ひとつ簡単に踏み潰せるほどの巨大な足。
それが一歩一歩歩くたびに超巨大地震が起こる。
部長は、
「みんな大丈夫か! しっかり捕まるんだ。」
さっきの巨人のズボンに捕まってたときとは比べ物にならないほどの振動と暴風。
普通なら一歩でも吹き飛ばされるところだが、
大ちゃんの力でなんとか全員天使の足にしがみついていた。
だが、大ちゃんの力もみんなの体力ももう限界。
そのときとんでもなく巨大な天使の足が止まった。
部長は、
「ふー、なんとかみんな無事みたいだな。」
すると元巨人が、
「お前らが俺についてくるからこんなことになったんだぞ!
 どうしてくれるんだ。 今頃俺は元の世界に戻れていたのに・・・」
ダイちゃんは、
「助かったんだし文句言うなよ。
 僕たちだってお前の汚い足掃除させられたんだぞ。」
元巨人は、
「それはお前らの仕事だから仕方ないだろ!」
ベルが、
「まぁまぁ、まだ元に世界に戻れないと決まったわけじゃない。
 みんなで力を合わせれば、きっと何とかなるはずだ。」
部長が、
「ところでここはどこなんだ? 周りのものが巨大すぎて場所がわからん。」
とんでもなく巨大な天使は、さっきの部屋の隣の休憩室のような部屋の
椅子に座っていた。
テーブルもあって、そこで紅茶を飲んで休憩していたのだ。
すると別の部屋からとんでもなく巨大な天使と同じサイズの男が入ってきた。
「よう、さっき検査したんだろ? 合格させたのか?」
するととんでもなく巨大な天使は、
「いや、あいつ最小族を脱獄させようとしてたんだ。」
「ってことは処刑したのか。」
「それが・・・、逃げられた。」
「ええ! そりゃまずいだろ。 リーダーに潰されるぞ。」
「逃げられたって言っても、あの部屋にいることは間違いない。
 あとで殺虫剤撒いておけば問題ないだろ。」
「けど、リーダーにバレたらやばいぞ。
 リーダーはこの世界じゃ神様だからな。
 天使に天罰くだされるぞ。」
「変な冗談やめろよ。 リーダーにしたら俺たちなんて米粒みたいなもんだろ。
 マジで指で触れられただけでぺちゃんこだ。 絶対ばらすんじゃないぞ!」
「わかってるよ。 けど、逃げたやつは絶対処分しとけよ。」
「ああ。」
そのとんでもなく巨大な天使たちの会話は部長たちにも大音量で響いていた。
部長が、
「聞いたか? リーダーが神様とか言ってた。
 もしかしたら神様に会えるんじゃないか?」
ベルは、
「だが、神様から見たらこの超巨大な天使ですら米粒サイズだとも言っていた。
 そんなやつに会って何とかなるんだろうか。」
大ちゃんも、
「この天使から見たら僕たちは米粒どころかゴマ粒ほどもないよね。
 それなのにその天使が米粒サイズに見えるなんて・・・。
 うー、想像できないよ。」
部長は、
「まぁ、とにかく元の世界に戻る方法さえ見つければいいんだ。」 

見つければいいんだ。」 

第850話

その時、
「お前たち。そんなところで何をやってるんだ。」
 先ほどの部屋にもう一人の男が入ってきた。その男は色黒で、
先ほどの2人のとんでもなく巨大な天使たちに比べても大柄だった。
その3人目でもある色黒でとんでもなく巨大な上更に大柄な天使は、
「何でリーダーがわざわざこんな辺鄙(へんぴ)な地区まで来てると
 思ってるんだ。」
 部屋にいた2人のとんでもなく巨大な天使たちは、
「そうだ。リーダーがこんなところまで来るのは久しぶりだな。
 いつもは俺たちのほうから出向いていくしな。」
「なんか、やばくなってきたような気がする。」
 3人目でもある色黒でとんでもなく巨大な上更に大柄な天使、
表現が長くなるので色黒のとんでもなく巨大な天使は、
「リーダーが緊急招集をかけたんだ。お前たちも早く行かないと
 大変なことになるぞ。」


 さて、とんでもなく巨大な天使の足の上にいる部長たち、
「とにかく、神様のところへいけそうな感じだな。」
 部長が言うと元巨人は
「ここにいる天使たちすら米粒大に見えるやつなんだ。
 もしそんなやつに潰されたりしたら俺たちなんか
 その衝撃だけで消し飛んでしまうかもしれない。」
 ダイちゃんが、
「小さくなったら急に弱気になったな。とにかく神様のところへ
 連れて行ってもらえそうなんだから。」
 元巨人は、
「ここまで移動するだけでも大変だったんだぞ、
 これ以上の移動は不可能に近い。」


 ここには先ほどの3人を含め、
何十人ものとんでもなく巨大な天使たちが集まっていた。
部長たちから見れば周りの数人くらいしか確認することが出来ない。
部長たちががここまでくることが出来たのはまさに奇跡だった。
部長たちはあのあと安全地帯を発見したのだ。
とんでもなく巨大な天使の足のちょっとしたしわだったが、
部長たちにとっては途方もない衝撃からある程度守ってくれる
谷のような地形になっていた。それだけでは不十分だったが
大ちゃんが最後の力を振り絞り、周りにバリアーを張ってくれたので
何とかここまで持ちこたえられたのだ。

 とんでもなく巨大な天使の一人が言った。
「おい、リーダーが来るぞ。なんか機嫌が悪いらしいから気をつけろよ。」 

第851話

しばらくすると、遠くから定期的な振動が伝わってきた。
とんでもなく巨大な天使が歩く振動に耐えるだけでもやっとだった部長たちだ。
とんでもなく巨大な天使ですら米粒ほどに見える
神様の歩く地響きなんて想像もできないほどだろう。
部長が、
「もしかしてかなりやばいんじゃないか?
 このままだと神様がただ歩いただけの振動で消し飛ばされるんじゃないか?」
ベルも、
「たしかにそうだが、もう引き返せないぞ。」
部長が、
「大ちゃん、頼んでばかりですまないが。 みんなを守ってくれ。」
大ちゃんが、
「うん、できる限りやってみる。」
振動がかなり大きくなってきた。
それでもまだまだ神様はかなり遠くを歩いていた。
そのうち、部長たちが振動で軽く飛び跳ねてしまうほどになった。
大ちゃんは念じて、みんなを天使の足に固定するようにバリアを張った。
あとはみんなの体力と大ちゃんの精神力がどこまで続くかだ。
そしてとうとう、とんでもなく巨大な天使たちですら
立ってられないほどの振動になってやっと止まった。
「お前ら。 全員集まったか?」
ものすごい大音響の声が響き渡った。
天使たちですらそうなのだから、部長たちには
でかすぎてとても聞き取れるレベルじゃなかった。
大ちゃんはバリアを消して、再び念じた。
すると、大音量すぎて聞き取れなかった話し声が何とか
聞き取れるようになった。天使たちは声をそろえて、
「はいっ、そろってます。」
と、はるか上空に返事をした。
神様はその返事を聞くと、話しはじめた。
「今日お前らを集めたのは、この天国に入り込んだお尋ね者を探しているからだ。
 お前ら、怪しい連中を見なかったか?」
すると部長たちが足にいる天使ともう一人の天使がこそこそと話しはじめた。
「さっきお前が言ってた脱獄しようとしてたってやつらのことじゃないのか?」
「それはないだろう。 あれはついさっきのことだ。
 それにお前にしか話してないんだ、神様が知ってるわけない。」
「けど、一応話しておいた方がいいんじゃないか?」
「ばか、変なこと話して目を付けられたら潰されるかもしれないだろ。
 さっきのことは殺虫剤撒いて解決なんだ。
 リーダーが言ってることとは関係ない。」
「ならいいが。 あとでまずいことになっても知らないぞ。」
「脅かすなよ。 そんなわけないんだから。」
その足の上で聞いていた部長たちも、
「神様が言ってる怪しい連中って・・・」
ベルが、
「ああ、たぶん私たちのことだろう。」
ダイちゃんは、
「だとしても心配することないって。
 今の大きさの僕たちを見つけられるわけないだろ。
 まあ、そのうちあいつらより巨大化してぶっ潰してやるけどね。」 

第852話

 だがその直後、それは間違いであることを思い知ることになる。
「今までなら、そのお尋ね者は小さすぎて、もし誰かがかくまって
 いたとしても見つけることは出来ないだろう。」
 神様の話を聞き、天使たちはざわめきだした。足の上で聞いていた
部長たちだが、
「あんなことを言っているが、何か方法でもあるんだろうか?」
 ベルが言う。ダイちゃんは、
「心配性だなあ。大丈夫、見つけられっこないって。」
 神様の話は続いた。
「これは冷静に対処すべき問題だ。いくらでも補充はできるとはいえ、
 これ以上お前らを犠牲にするわけにはいかんからな。」
 神様はそういうと両手を自分の目の前で組み、気合をこめた。
「はうっ!」
 部長たちにとっては、バリアで守られているとはいえその声でさえ、
かなりの振動として感じる。もちろん、バリアがなければどうなって
いたかわからないが。
「むうっ!」
 神様が再び気合をこめると、体全体が光り始めた。光が消えると
神様はとんでもなく小さくなっていた。とはいっても相対的にであり、
それでも天使たちの10倍以上のサイズである。神様は、
「これで一人ひとり確実に調べることが出来るぞ。」
 そう言って神様は天使の一人をつかみ、自分の顔の前に持ってきた。
「ではお前から聞こう。怪しいやつはお前のところにはいないだろうな。」 

第853話

神様に掴まれた天使は、
「は、はい!もちろんです。 誰もかくまってません。」
すると神様は巨大な顔をその天使に近づけて睨みつけながら、
「もし後で嘘がバレたらどうなるかわかっているな? それでも答えは変わらないか?」
今にも握り潰されそうな恐怖に震えながら天使が、
「変わりません! ほんとに誰もかくまってません! 信じてください。」
神様はそのまましばらく天使を睨みつけていたが、
「よし、いいだろう。」
と言って掴んでいた天使を下に降ろした。
そして続けて隣の天使に手を伸ばして掴みあげた。
神様はそうして天使を順番に調べていく。
そしてとうとう部長たちが足に付いてる天使の順番がきた。 

第854話

 その天使は心の中で、
(殺虫剤を撒いたから大丈夫、殺虫剤を撒いたから大丈夫、殺虫剤を……)
 その様子を見ていた神様は、
「むん、どうした?なんだか様子が変だぞ。」
 周りにいたほかの天使たちも一斉にこっちを見る。また、天使たちは、
「あいつなのか?」
「まさかぁ。」
「いや、なんか裏切り者がいるとか言ううわさは聞いたことがあったが……。」
「ひびってるだけだろ。」
「かわいそうに。もうおしまいだな。」
 神様は、そんなことなど気にする様子もなく、天使をつかんで持ち上げた。
そして今まで同じように、
「おい、まさか怪しいやつをかくまってはいないだろな。」
 天使は、
「い、いえ、とんでもありません。」
「ほう……。」
 神様はそういいながら少し握る力を強くする。
「ほ、本当です。私はあや……ぅわぁぅっ!」
 天使は、握られる力が強くなり最後まで話すことができなかった。
息するのも困難だったがそれでも外に出たある程度自由がきく
片腕を動かし、そこから不可能な脱出を試みようとしていた。

さて、部長たちはどうなったのだろうか。かろうじて大ちゃんのバリアで
天使の足にくっついてはいたが、神様に持ち上げられたショックで
ついに足からバリアごと引き離されてしまった。引き離されたバリアは、
巨大なシャボン玉のようになり部長たち全員をとりあえず守っていた。
「ふう、何とか助かったみたいだな……。」
 部長が言う。ベルは、
「さっきのショックで空中を飛んではいるが、このまま下に落ちて
 あいつらに踏み潰されたらおしまいだぞ。」
「ん?わぁぁぁぁぁーっ!」
 部長たちの誰かが叫んだ。シャボン玉バリアは、ちょうど神様の顔の前を
飛んでいたのだ。ダイちゃんは、
「大丈夫だって。こんなに小さかったら気づかれるわけないよ。」
 その直後、シャボン玉バリアは激しく揺れ始めた。部長は、
「もしかして気づかれたのか?」
 実はそうではなかった。シャボン玉バリアは神様の呼吸の空気の流れに
巻き込まれたのだ。そしてそのまま神様の鼻の穴へ向かっていった。


「な、なんだここは?」
 部長達が気がつくと大きな部屋の中にいた。その部屋にいた老人が、
「気がついたかね。おまえさんたちはどこからきたのじゃ?倒れていたのを
 町のみんなで連れてきたのじゃ。」
 部長がここにきた理由を話すと。
「ウーむ。やはりあのうわさはほんとうだったか。」
 大ちゃんが、
「うわさって?」
「この世界は神様の体の中に有るということだ。何人もの勇気有るものが
 それを確かめるために旅立ったが、誰も帰ってきたものはいない。
 どうやら外の世界へ行く道を守る巨人にやられたらしいのじゃ。」 

第855話

ダイちゃんが、
「ところで、ここって神様の体のどの辺りなんだろう。
 あの大きさじゃ、もしお腹の中とかだったら
 一生かかっても出られそうにないよ。」
ベルが、
「おそらく鼻の穴の中だろう。
 もしそんな体の奥まで吸い込まれていたとしたら無事であるわけが無いからな。」
部長も、
「たしかに今のサイズじゃ、神様のちょっとした粘膜や
 唾液に捕まっただけでアウトだろう。」
ダイちゃんが、
「でも鼻の穴の中なら、さっき吸い込まれたときみたいにものすごい
 風が吹いてるはずじゃない?」
すると老人が、
「それならあれのおかげだろう。
 あれがこの町を囲んで風を防いでくれてるんだ。」
部長が、
「あれって、あの黒い巨大な壁のことか?」
老人は、
「そうじゃ。 お前たちの話で気づいたが、あれは神様の鼻毛だったんじゃな。」
部長が、
「は、はなげ・・・?
 あのどこまでも続いてそうな巨大な壁が1本の鼻毛だってのか?」
老人は、
「そういうことじゃ。
 神様にとっちゃ1cmあるかないかの距離だろうが、
 わしらには途方もない距離を歩かないと鼻の外には出れん。
 しかも外に出るのを阻む巨人もいる。
 やはりわしらはここで一生暮らすしかないのかもしれん。」 

第856話

「ウーむ。それにしてもあの壁にたどり着くまで、どのくらいあるんだ?」
 部長が言うと老人が、
「せっかく助かったのだから、できればこの町にとどまってもらうほうが
 いいんじゃが、どうしてもというのならここでしばらく休んでから息子に
 行ける所まで送らせよう。」
 するとダイちゃんが、
「アーあ、巨大化できたらこんな苦労なんてしなくていいのに……。」

 部長たちはしばらく休んだ後、老人の息子が運転するトラックの
荷台に乗せてもらい、町外れまで連れて行ってもらった。老人の息子は、
「車でいけるのはここまでだ。戻るというのならそのまま連れて
 戻ってもいい。」
「そうだね。やっぱり戻ったほうが……いいかな……。」
 石本がいった。するとダイちゃんが、
「戻るなんて言う訳ないだろ。て、言うか拒否権すらないからな。」
「やっぱり……そうだろうね。」
 石本は答えた。ニショブは、
「それにしてもここまで来るのにもかなりの距離を移動したな。
 巨人に会わなかったとしても、外に出るまでは大変そうだ。」
 部長達が送ってもらったところまでは一応ちゃんとした道ができて
いたのだが、その先の道はいきなり細くなりどうなっているかわからない。
そのときである。
「困っているようだな。」
 突然どこからともなく声かした。部長たちは周りを見回した。
「ここだ。」
 何と、部長たちのすぐ近くに巨人がいた。声の主はその巨人だったのだ。
部長たちは身構えたが、
「別にとって食おうというわけじゃない。条件次第では助けてやっても
 いいと思ってる。」 

第857話

ダイちゃんが、
「外に行く道を守ってるって言う巨人はお前のことだな?」
すると巨人は、
「なんだ、俺はそういう風に思われてるのか。 別に守ってるわけじゃない。」
部長が、
「俺たちは外に出ないといけないんだ。 通らせてもらうぞ。」
巨人は、
「だから、俺の話をまず聞け!
 俺だって好きでこんなところにいるわけじゃない。
 外に出られるなら出たいんだ。」
ベルは、
「何かわけがありそうだな。」
巨人は、
「お前らはさっき吸い込まれてきたばかりのやつだろ?
 上のほうを通り過ぎていくのが見えた。」
部長が、
「ああ、そうだが。」
巨人は、
「やはりな。 条件と言うのは、今の外の状況を教えて欲しいってことだ。」
ダイちゃんが、
「何でそんなこと知りたいの? あやしいな。
 どうせ教えたら潰そうと思ってるんでしょ。」
巨人は、
「お前らがさっきいた町で何を言われたか知らないが、
はっきり言って現状ではここから出るのは不可能だ。
 たとえお前らより巨大な俺でもだ。」
ニショブは、
「つまり、守ってるわけじゃなく出られないからここにいるってことか?」
巨人は、
「まぁ、そういうことだ。 だが諦めたわけじゃない。」
部長は、
「なぜ町のやつらが外に出ようとここまできたとき追い返すんだ?」
巨人は、
「あいつらの力じゃ出られないのがわかってるからだ。
 ここが神様の鼻の穴だってことは知ってるんだろ?」
部長は、
「ああ、あの巨大な黒い壁に見えるのが鼻毛なんだろ。」
巨人は、
「そうだ。 ここは風もなく普通に歩いていられるが、
 少しでも道をはずれると呼吸の気流に飲み込まれて一気に体の奥の方まで
 吸い込まれてしまう。そうなればもう出ることは完全に不可能になってしまう。」
ベルが、
「私たちが吸い込まれたとき、運よく鼻毛に捕まって奥まで吸い込まれずに
 すんだってことかな。」
巨人は、
「たぶんそうだろう。
 あの町のやつらも俺も神様に知らずに吸い込まれて、
 奥まで行かずに助かった者たちだ。」
部長が、
「話は何となくわかってきたが、なぜ外の状況を知りたいんだ?」
巨人は、
「俺は吸い込まれてから今まで、ここから出ることだけを考えて生きてきた。
 鼻の入り口付近まで吸い込まれずに行ける道も調べてある。
 だが、問題は外に出た後のことだ。」
ベルは、
「鼻の外に出れても、神様の体から降りる方法がないってことか。」
巨人は、
「そう、神様の鼻から神様の足の下まで降りるなんて俺でも
 何ヶ月かかる距離かわからない。 下手したら何年もかかるかもしれない。」
ダイちゃんは、
「そんなに時間かけてたら、いつの間にか潰されちゃうね。
 巨大化さえできればすぐ解決なのにー。」
部長が、
「どうにか神様の体をつたわらずに神様から離れられる方法はないか・・・」 

第858話

「できる!」
 すると部長が、
「え?」
 巨人も、
「方法があるのか?」
 ダイちゃんは、
「んー、だれだっけ?声に聞き覚えはあるけど……。」
「アマーですよ。巨人に虫と間違えられて……。」
 ダイちゃんが、
「そうそう、なんかの機械で空とんでたやつだな。結構あちこちで
 メンバーが増えてきたからなぁ。」
 ニショブが、
「あのような飛行装置を作れば……。出口に着いたら空をとんで神様の
 体から離れればいいわけか。」
 部長は、
「作るにしても部品や材料が……。先ほどの町へ戻るのか?」
 アマーは、
「基本的にはそうだが、そんな複雑なものじゃない。巨大なパラシュートを
 作るんだ。私たちは神様の呼吸に吸い込まれてここへ来た。だから逆に
 吐き出す空気を利用してパラシュートで外へ飛び出し、そのまま下へ
 降りていくんだ。」
 ベルは、
「なるほど。だが失敗すれば反対に神様の体の中へ吸い込まれてしまうぞ。」
 ダイちゃんは、
「それに、うまく吐き出すときのタイミングを狙ってなるだけ離れないと
 神様の手とかにぶつかったら一瞬で消し飛んじゃうよ。」
 巨人は、
「材料になりそうなものなら、ある場所を知っている。こっちだ。」


 部長は、
「ここか、なぜこんなところに……。」
 大ちゃんは、
「僕たちのほかに神様はいろんなものを知らずに吸い込んでいるんだね。」
 巨人は、
「そうだ、いつかは役に立つかもしれないと、拾ってここへ持ってきた
 ものもあるが。」


 こうして部長たちはパラシュートを作り、巨人の案内で神様の鼻の穴の
出口が見える場所までやってきた。部長は、
「うーむ、このあたりでもかなり風が強いな。うまくタイミングを
 つかまないと……。」 

第859話

ベルが、
「ああ、少しでもタイミングを間違えれば終わりだからな。」
ダイちゃんは、
「風が外に向かって吹いてるときに行けばいいんだろ。
 簡単だよ。」
部長が、
「ちょっと気になったんだが、外に吹き飛ばされたとき
 一瞬で何kmも先まで飛ばされるんだよな。 体はもつのか?」
ニショブも、
「そういえばそうだ、神様にとっちゃ数cm飛ばしただけでも
 我々にしたら数kmじゃすまない距離だ。 行く前に気づいてよかった。」
ダイちゃんは、
「でもそれじゃ外に出られないじゃないか。」
部長は大ちゃんに、
「何度も大ちゃんに頼ってばかりで申し訳ないが、
 みんなを守れるバリアを作ってくれるか?」
大ちゃんは、
「うん、できる限りの力でやってみるよ。」
部長が、
「後はタイミングを見計らって飛ぶだけか。」 

第860話

 そのときである。

-ヒュウウウーッ、ゴォーッ-

「風が強く……やばい!反対方向だ!伏せろ!」
 部長の指示で全員が伏せた。

 しばらくすると風が収まり、静かになった。さらにしばらくすると。

-ヒュウウウーッ、ゴォーッ-

「今度は外へ出る方向のようだ。」
 ベルが言った。風は更に強くなり、立つのも困難なくらいになってきた。

-ゴォォォォォーッ-

 部長が、
「そろそろ出発す……わぁっ!」
 部長が言葉を言い終わらないうちに突然全員の体が浮き上がったかと
思うと、信じられないスピードで移動した。


「こ……ここは……。」
 部長が言うとニショブが、
「あれをみろ!」
 はるか遠くのはずなのに、全員の視界いっぱいに広がる神様の顔。
「やった、大成功だ。」
 ダイちゃんが言った。
「そうか、これが外の世界なのか……。」
 巨人が言う。部長は、
「バリアを張ってもらって正解だったな。これほどの距離を一瞬で
 動いたんだからな。」
 バリアで守られている部長たちは、神様から気づかれることなく
離れていく。距離が離れていくと神様が何かをしているのかがわかってきた。
「いったいあれはなんだろう?」
 大ちゃんが言う。神様は何か大きなお盆のようなものを持ち、
どこかへもっていこうとしていた。よく見ると周りにも同じようなお盆が
無数に浮かんでいる。バリアで守られた部長たちはそのうちのひとつに
近づいている。お盆の一つ一つには同じような模様があった。その模様は
宇宙から見た地球の表面のようである。部長は、
「もしかして……。」
 ベルが、
「おそらく、この一つ一つが『世界』なのだろう。私たちが神様に
 吸いこまれるまでいた世界もこの中にあるはずだ。」
 そう言っているうちにバリアで守られている部長たちはお盆の上に
作られた世界のひとつに降りていく。雲の間から海や陸地が見え、
山の形がはっきりしてきた。


「着陸できたのはいいけど、誰もいないね。」
 ダイちゃんが言った。部長たちはジャングルのような場所にいた。
部長も上を見上げながら、
「今回は味方に巨人がいるが、更に巨大な巨人が出てきても困るな。」
 そのときどこからともなく、
「わあーっ、助けてクレー、巨人だー。」
 ダイちゃんが、
「よし、今度こそ巨大化してやっつけてやる。」
 大ちゃんが、
「ちょっと待って。巨人は僕たちのことみたいだよ。」
 部長たちの足元を、一人のこびとが叫びながら走っていった。 

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