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第801話 中途半端に巨大化していたこびとは、 「どういうことだ、それ。 全員わざとリタイヤさせて食うつもりだったってのか?」 フテンは、 「最初からかはわからんが、今はそういうことなんだろう。」 中途半端に巨大化していたこびとは、 「くそ、絶対リタイヤにはならないぞ。」 だがフテンは、 「俺はあいつらに連れて行かれるくらいなら、リタイヤを選ぶ。 俺はもともと巨人に捕まったらわざと潰されるつもりだったからな。」 「な、なんだよ。 あんなやつのおやつにされて、それでいいのか?」 「連れて行かれるよりはましだ。」 そう言いながらも二人は走り続けるしかなかった。 大ちゃんは、博士とトネーを払い落としてしまった罪悪感から なんとか体の上に復帰させてあげようとしていた。 「そうだ、ここに乗って。 お腹の上に持ち上げてあげる。」 大ちゃんは博士とトネーが落ちた辺りに手の平をさしだした。 それを見たダイちゃんが、 「手助けはだめだぞ。 自分の力で戻らないと失格なんだから。」 大ちゃんは、 「でも僕のせいで落ちたんだよ。 もしそれでダイちゃんに食べられちゃったらかわいそうだよ。」 ダイちゃんは、 「もう、お前は甘いんだからー。 仕方ない、一回だけ戻してやってもいいけど体のサイズは今の半分の大きさで走ってもらうぞ。」 第802話 と、言うわけでサイズを半分にされてしまったものの、一応戻して もらったデーソ博士、 「助かった……すまない……。」 トネーは、 「でもこれではかなり不利ですよ。」 「走るぞ。あきらめなければ何とかなる。」 さて、そのころ石本は……何とか復帰できたデーソ博士とトネーに 迫っていた。 「アーあ、ライバルが減ったと思ったのに、でも何とかなるかも……。」 それを聞いていたダイちゃんは、 「そんなこと言っていいの?強制的にリタイアさせようか……。」 「わ、わかったよ……。」 石本は再び走り始めた。さて、一方、中途半端に巨大化していたこびと とフテンは展開上一位集団となっていた。大ちゃんとダイちゃんの やり取りを聞き、 「なんかリタイアしたらしい二人が復帰したようですよ。」 中途半端に巨大化していたこびとが言う。フテンは、 「いちいち巨人たちの気まぐれに付き合うな。なるようにしかならない。」 「あなたは覚悟が出来ているからいいですよ。私はいったいどうなるん ですか?」 そのころ石本は、デーソ博士とトネーを追い越す体制に入りつつあった。 第803話 中途半端に巨大化していたこびとは、このまま1位か2位に入ってしまうのを恐れて フテンに飛び掛った。 「何するんだ!」 フテンは中途半端に巨大化していたこびとに押さえつけられる形で倒れた。 「このまま1位か2位になるわけにいかないんだ。 悪いけど、誰かが1人追い抜いていくまで動かないでもらう!」 フテンは、 「やめろ。 こんなことしても無駄だ。 巨人に目をつけられて失格にされるぞ。」 案の定、すぐにダイちゃんに見つかった。 「何してるの? ズルしたら失格だよ。 今すぐやめないと、今すぐ口に入れるからね。」 フテンは、 「ほら見ろ。 早くどけ!」 そう言って中途半端に巨大化していたこびとを押し返した。 「くそー、どうすればいいんだ。」 後ろではちょうど石本が博士たちと並んでいた。 石本は、 「まずはこれで2人抜き。 小さいやつを抜くのは余裕だね。 ばいばーい。」 博士もトネーも必死で走ってるが、半分のサイズの体では抜き返すのは無理だった。 トネーが、 「このままじゃビリになっちゃいますよ。」 博士は、 「私は連れて行ってもらえるならビリになってもかまわんが・・・。 できれば君も連れて行きたかった。」 トネーは、 「連れて行ってもらえてもおもちゃにされるのは嫌ですよ。 ビリの場合は博士だけで行ってくださいよ。」 第804話 (さてどうする。このままではどう考えても2位……誰か追い抜きに 来ないか……) そう考えていた中途半端に巨大化していたこびとの後のほうに、 都合よく石本が近づいてきた。石本は、 「あ、もう前のやつに近づいてきた。なんか疲れているというよりやる気 なさそうな……おっさきにぃぃ〜。」 こうして難なく石本は2位になった。 「これなら1位になるのも楽勝だな。うん?」 大ちゃんの首の辺りにまでやってきた石本だったが、そこには首の ところから顔までうまく登れず立ち往生していたフテンがいた。フテンは、 「巨人よ、もう見ているはずだ。どうしてもうまく登れない。ここで リタイヤするぞ。彼を1位にしてやっくれ。」 石本は、 「やったー、1位だー。」 するとダイちゃんは、 「だめだめ、そんなに簡単にあきらめてもらっちゃ困るよ。ゴールは もうすぐなんだから。」 すると石本は、 「えエー。僕が1位でいいでしょ。」 ダイちゃんは石本に、 「もしほかのメンバーが全員リタイアしても、ゴールしないと1位と 認めないよ。」 そうしているうちに中途半端に巨大化していたこびとがやってきた。 「ちょ、ちょっとみんな何やっているんですか!なんで先に行ってないん です?」 こうして3人が大ちゃんの首の辺りで進めなくなってしまったのだった。 第805話 その時、突然地面が揺れだした。 つまり大ちゃんの体が揺れだしたのだ。 「うう、あんまり首の辺りでちょこちょこ動かないでー。 そこも弱いんだよー。」 大ちゃんは、首の辺りがくすぐったくて我慢して揺れていたのだ。 普通でも登れないのに、揺れているせいで余計に顔に登るのは難しくなってしまった。 石本は、 「これじゃ登れないよー。 もう僕が1位でいいでしょ。 これ以上進めないんだしここがゴールだよ。」 ダイちゃんはフテンを指して言った、 「そこがゴールってことは、1位はお前じゃなくてこいつってことになるけどいいの?」 石本は、 「でもそいつは1位を僕に譲ったんだし。」 でもダイちゃんは、 「順位を譲るなんてルールないし。 ちゃんとゴールしないと認めないって言ってるでしょ。」 石本は仕方なく首から顔の方に登ろうとした。 が、やっぱり揺れているせいもあってすぐに滑り落ちてしまう。 「大ちゃん、お願いだから揺れないで。」 大ちゃんは、 「無理だよー。 もうくすぐったくて我慢してるだけでもやっとなんだもん。」 そうしてる間に、遠くの方から博士とトネーが近づいてきているのが見えた。 「このままじゃせっかく追い抜いてきた意味がなくなっちゃうよー。」 第806話 さて、その博士とトネーは、 「なんかあそこで固まってますよ。」 「これはチャンスかもしれない。」 2人はだんだん石本に近づいてくる。石本は、 「来るなー、来るなー、あっちいけー。そうだ、あいつらは小さい から……。」 石本は手足を大きく振り回す。トネーは、 「博士ーこれではゴールどころか近づけませんよ……って博士ー。」 博士は一人石本へ向かって走っていった。石本は、 「来ちゃだめー、近づいたら本気で殴っちゃうよー。痛いよー。」 ーぱっこーんー そうしているうちに石本の拳が博士に直撃した。 「ホラー、言わんこっちゃない。」 が、その直後、予想外のことが起った。殴られた博士は小さく軽かった ので衝撃で飛ばされ空高く舞い上がり、大ちゃんの顔の上に着地した。 それを見たダイちゃんは、 「これで2位が決まったね。ゴール地点を通過したんだし。」 博士は、 「やったー。」 そのときである。博士が着地したのは大ちゃんの鼻の穴付近。大ちゃん は、 「くしゃみが出そうだ。みんなつかまってー。」 それを聞いた博士はもちろん、トネーやフテン、中途半端に巨大化 していたこびとは安全そうな場所に移動し、背を低くしたりしたが石本は、 「えっ、あっ、なにがどうしたの?」 「はあっくしょぉぉぉん!」 大ちゃんの大きなくしゃみの衝撃で、石本だけが下に振り落とされて しまった。ダイちゃんは、 「残念だねー。リタイアだよー。」 石本は、 「そんなぁ。見逃してよー。」 「だめだめ、もうリタイアしたら助けないって言ったでしょ。」 「と、言うことは私たちが3位と4位?」 中途半端に巨大化していたこびとはトネーを見ながら言った。 「そうだね。」 大ちゃんが言うと博士はトネーに、 「うーむ。一緒に行けなくなったのは残念だが、私の研究を引き継いで…… いや君のやりたかった研究をやってくれ。」 フテンは、 「私が嫌がっても連れて行くんだろ。勝手にしろ。」 博士は、 「これで巨人たちの世界にいける。」 すると大ちゃんは、 「でも連れて行くのはいいけど、ここからどうやって出るの?」 「何も考えていないと思ってるの?ちゃんと出る方法は考えてるよ。 ほら。」 ダイちゃんが地面を指差して言った。今までは気づかなかったが、 大ちゃんたちが通れそうな穴が開いていた。ちょっと見たところ大きな 岩などに隠れてわかりにくいが、最近何らかの理由で崩れて出来た ような感じである。 第807話 大ちゃんは、 「この穴を通って外に出られるのかな? ここってものすごく大きな水槽みたいな入れ物の中なんだよ。 そんな簡単に出られるかな。」 ダイちゃんは、 「出られるかどうかなんて行ってみればわかるだろ。 それよりも、まずはこいつだ。」 ダイちゃんはくしゃみで振り落とされた石本を摘んで言った。 「リタイヤしたやつはどうなるんだっけー?」 石本は、 「リタイヤなんてしてないよ。 こんなのずるいよー。」 でもダイちゃんは、 「落ちたんだからリタイヤだよ。 それにもう順位は決まっちゃったからね。」 石本は、 「くしゃみするなんてひどいよー。 大ちゃんのせいだよー!」 ダイちゃんは、 「自分が悪いんだろ。 リタイヤしたやつは僕のおやつって言ったでしょ。 じゃ、僕のお腹の中にいってらっしゃーい。」 ダイちゃんは石本を口の上に摘み上げて、あーんと口を開けた。 第808話 大ちゃんは、 「いくらなんでも石本のおにいちゃんを食べちゃうのはかわいそう だよー。」 「大ちゃんありがとう。なんてやさしいんだぁー。」 石本がダイちゃんにつまれたまま言う。するとダイちゃんが、 「なんなら、このままひねり潰しちゃおうか?」 「ちょっと待ってよー。ひどすぎるよー。」 「あ、そうだいい事考えた。」 「もしかして食べるのやめてくれる?」 「違うよー。今から2人になれ。」 ダイちゃんが言うと「ポンッ」という音がして石本は2人に分裂した。 一人は大ちゃんにつままれたままだったが、もう一人は空中に放り 出された。放り出されたほうの石本は、 「ちょっとー、これじゃ死んじゃうよー。」 しかし大ちゃんが両手でしっかり受け止めてくれたため石本は助かった。 しかし、もう一人の石本は、 「これで一応助かったんだから文句無いでしょ。いただきマース。」 ダイちゃんはそう言うと石本を自分の口の中へ放り込んだ。 「そんなぁー。おやつになんかなりたくないよー(涙)」 石本はダイちゃんの口の中に落ち込むまで空中で必死に手足をばたばた させたが、鳥のように翼があるわけでもなくそのままダイちゃんの口の中へ 落ち込んでしまった。 第809話 ダイちゃんの口に放り込まれた石本は必死に命乞いをした。 「ダイちゃんお願い。 人なんか食べるもんじゃないよ。 きっとまずいよ。 だから食べないでー。」 でもダイちゃんは、 「お前だって人食べようとしてただろ! もう1匹は助かるんだからお前は約束どおりおやつだ!」 ごくんっ 「あっ!!」 もう一人の石本が大ちゃんの手の上で叫んだ。 「ほんとに飲み込んじゃったよー。 大ちゃんなんとかしてよー。 このままじゃもう一人の僕が・・・」 大ちゃんは、 「何とかしてって言われても・・・。」 するとダイちゃんは、 「僕の腹からテレポートで逃がしたりするなよ。 こいつは今まで問題ばっかり起こしてきたんだ。 一回ほんとに食われた方がいいんだよ。」 石本は慌てて言った。 「大ちゃんあんなこと言ってるよー。 早くしないと胃で溶かされちゃうよー。」 でも大ちゃんは、 「うーん、石本のお兄ちゃんもいろいろ問題起こしてきたのは確かだし・・・。 1人だけだから我慢してくれる? ダイちゃんもそれで気がすむみたいだし。」 石本は、 「な、何言ってんの大ちゃん! 分裂したって意識はつながってるんだよ。 ダイちゃんの腹でもう一人の僕が苦しめば僕も苦しいんだよ。 我慢できることじゃないよー。」 ダイちゃんは、 「まだ文句言ってるの? お前も食うぞ! もうそんなやつの言うことほっといて行こう。」 第810話 こうしてダイちゃんは石本を飲み込んでしまった、というか飲み込んだ まま先ほどの穴へ入って行ってしまった。その直後、大ちゃんがあることを 念じていたのにダイちゃんは気づかなかった。 「それじゃ、行くよ。」 大ちゃんは分裂した石本に加え、博士、フテンを手のひらに乗せ、 ダイちゃんの後をついて行った。博士は、 「何か先程念じていたようでしたが……。」 すると大ちゃんが言った。 「ダイちゃんには内緒なんだけど……。」 今度は石本が、 「もしかして助けてくれるの?」 「一時的に石本のお兄ちゃんを不死身にしたんだ。ダイちゃんのお腹の中で とけちゃったりしたらかわいそうだと思って。」 「ありがとう……。あれ……?でもよく考えたらどんなに苦しんでも 死なないってずっと痛い思いや苦しい思いをしなければいけない ってことじゃないか。そんなのいやだよー。」 大ちゃんはしまったと思った。するとフテンが言った。 「そんなことか。確かに慣れるまでは大変だったな。」 石本は、 「慣れるまでって、不死身になるのは一時的だから、慣れるころには 不死身じゃなくなってるよー。」 さて、こちらはダイちゃんのお腹の中。もう一人の石本は、なんとか 脱出するため胃壁を登ろうとしていた。 第811話 大ちゃんのおかげで体が溶けないから痛みはないが、 ヌルヌルしてるせいでまったく登れない。 上から出られないとすると、残ってる道は下からだけだ。 石本はそう考えると絶望的な状況を想像してしまった。 「下からなんていやだーー。」 再び上に登ろうとしたが、やっぱり無理なものは無理だった。 他のものがどんどん溶かされ、強烈な臭いと胃壁が活発に動き出して振り落とされた。 ぐにょぐにょと動きまくる胃に揉みくちゃにされて、どろどろの胃液に溺れかけて 痛み以外の苦しみが一度にきたような状況だった。 その苦しみは大ちゃんの手にいる石本にも伝わってくる。 「大ちゃん、苦しいよー。 こんなの慣れるなんて無理だよー。 お願いだから出して。」 大ちゃんも出してあげたかったけど、ダイちゃんが怒ったらなにするかわからないから 出してあげることはできなかった。 「ごめんね石本のおにいちゃん。 今はまだ出してあげられないよ。 もうちょっと我慢して。」 第812話 ダイちゃん&大ちゃん一行は先ほど見つけた穴に入り、その先の そのまた奥へと進んでいった。しばらく歩いた後で大ちゃんは、 「あ、そうだ。しばらく休まない?」 「なんだよ。もう疲れたのか?」 ダイちゃんが言うと大ちゃんは、 「もしかするとこのまま進んでいったら、敵の攻撃とかがあるかも しれない。休めるときに休んでいたほうがいいと思うよ。ダイちゃんが 休んでいる間は僕が敵が来ないか見張っているから。」 「そうか。確かに今のところ敵が出そうな様子もないしな。」 その後ダイちゃんは、 「でもなんでいきなりそんなこと言うんだ? 今までそんなこと言ったこと あったっけ?」 「え、いや、なんとなくこの先とんでもない敵とかでそうかな〜って気が するかな〜、って感じ……。」 「そうなのか?」 「うん、まあね。」 「あいつ一匹食ったところで腹の足しにもならないしな。休むか。」 ダイちゃんはそう言って横になった。 さて、こちらは大ちゃんのおなかの中、 「うわっ!」 ダイちゃんが横になったとき、胃全体が大きく動き、石本はその中で ころころ転がってしまった。大ちゃんのおなかの中の石本は、 「ダイちゃんが横になったからもう登らずに胃の入り口にたどり着ける はずだけど……。」 とはいうものの、胃の中は暗い上に、先ほどのショックで自分がどっちへ 向かおうとしているのかよくわからなくなってしまったのだが、出口らしい ところを見つけた。 「ここから出られるかな?」 石本は出られそうなところを押し広げようとしたが、びくともしない。 「ここじゃないのかなー。それとも……。」 石本が悩んでいると突然出口がパカッと開いて石本は胃の外へ出ることが できた。しかし、それは新たなる悲劇の始まりに過ぎない。そう。石本は 胃の出口から十二指腸へ抜けてしまったのだ。 第813話 大ちゃんは手の上の石本に聞いた。 「どう? うまくいきそう?」 石本は、 「うーん、胃から出ることはできたようだけど・・・。 どこだかわからないみたい。」 大ちゃんは、 「ええー、でも胃から出れたなら上がってこれば口まで一本道のはずだよ。」 石本は、 「たぶん反対側から出ちゃったんだ。 どうしよう。」 大ちゃんは、 「反対側! そんな、そっち行っちゃったらもう下から出るしか・・・」 石本は、 「下からなんていやだー。 大ちゃん何とかしてよー。」 大ちゃんは、 「そんなこと言われても。」 するとダイちゃんが、 「おい、何をごちゃごちゃしゃべってるんだ? お前が休もうって言ったんだろ。 休む気ないならもう行くぞ。」 大ちゃんはあわてて、 「あ、ごめんごめん。 もうちょっとだけ休もうよ。」 第814話 大ちゃんと石本は、ダイちゃんから少し離れて再び相談を始めた。 「困ったなー。思うように戻れないみたいだ。どうしよう。そうだ。」 そう言った後しばらく考えていた石本は大ちゃんに、 「僕の体を大きく出来ないかな。その分力が強くなって戻りやすく なると思うよ。」 「わかった。やってみるよ。でもあまり大きくすると大変なことに なっちゃうかもしれないよ。」 そう言って大ちゃんは念じた。 さて、ダイちゃん腸の中の石本は、 「お、やった、体が大きく……。あれ?でもこのくらいなら何とか なるかも。」 2倍くらいの大きさになった石本は今まで来たところを逆に戻り始めた。 しかし、体が大きくなった分動きにくくなり石本が逆向きに進もうとすれば 腸が刺激され、押し戻されてしまう。それでも石本は必死で逆向きに 進もうとしている。 「なんか変だなー。前より進みにくくなったような……大きくなったから 力は強くなっているはずなんだけど……。」 外の石本と大ちゃん、2人で話していると大ちゃんは突然肩をたたかれた。 「うわっ!」 もちろん、肩をたたいたのはダイちゃんだ。ダイちゃんは、 「何驚いてるんだ。」 「え?もういくの?まだ休んで……。」 「ちがうよ。」 「?」 「友達どうしでも言いづらいことってあるだろ。」 「え、まあ、うん……ってもしかして……。」 そのころ、ダイちゃん腸の中を無理して逆向きに進んでいた石本 だったが、皮肉にもその行動が刺激になり、腸が激しく動き始めた。 「わぁぁぁぁぁっ!!」 石本は今まで戻った道を一気に押し戻され、悲劇の場所へと運ばれて 行くのだった。 第815話 大ちゃんはとりあえずダイちゃんを止めた。 「ダイちゃん、ちょっと待って。」 ダイちゃんは、 「何だよー。 用事なら後にしてよね。」 大ちゃんは、 「違うよ。 えーと、その。 こんなとこじゃまずいよ。」 ダイちゃんは、 「別にいいだろ。 なにがまずいんだよ。」 大ちゃんは、 「えーと。 それは・・・。」 ダイちゃんは、 「もう、さっきから変だぞ。 それと、もう止めるなよ。 じゃ。」 大ちゃんの手の上の石本は慌てて、 「あー、ダイちゃんが行っちゃうよー。 お腹の中の僕は大変なことに なってるって言うのに。 大ちゃん早く止めてよー。」 でも大ちゃんは、 「そんなこと言われても、石本のお兄ちゃんを助けようとしてること バレたら何するかわからないよ。」 石本はそれでも、 「なにされたって今の状況よりましだよー。」 大ちゃんは、 「もしかしたら、僕の手の上にいる石本のお兄ちゃんまで食べられちゃうかも・・・」 石本は、 「そ、それは・・・・。 ダイちゃんならありえる・・・」 第816話 ダイちゃんは用を足せそうな場所を見つけると、 「ここなら大丈夫そうだ。」 そのとき大ちゃんは、 「大変だダイちゃん、誰かこっちへ来るよ。」 しゃがみかけたダイちゃんは、 「いいかげんにしろ、いくら大ちゃんでもこれ以上僕の邪魔をすると 許さないよ。」 大ちゃんの手のひらの上にいる石本は、 「これでまたなんとかなりそうだ。」 「でも本当に誰か来るみたいだよ。」 大ちゃんが言うとおり、確かに何人か近づいて来るようだ。ダイちゃんは、 「んもう、出そうだったのが引っ込んじゃったじゃないか……。」 しばらくすると人影が確認できた。なにやらこちらには気づいていない 様子で話しをているようだ。ダイちゃんは、 「誰か知らないけれども、やっつけちゃおう。 すると大ちゃんは、 「ちょっと待ってよー。」 「やっつけると言ったらやっつけるんだ。」 「それは困る。同士討ちになる。」 向こうから近づいてきた人影は言った。その正体は部長とベルと ニショブだった。ベルは、 「石本をさがしているうちにここへの入り口を見つけた。そっちは どうだ?」 大ちゃんは、 「石本のお兄ちゃんなら見つかったけど……。」 そのときである。 -ガラガラ- 近くの壁が崩れ、巨人が現れた。巨人といっても、部長やダイちゃんに 比べて2、3倍くらいのサイズだが。巨人は、 「ここから脱出しようとしても無理なのジャー。何故ならばわしが お前らをやっつけるのジャー。」 第817話 巨人は自分のでかさに驚くだろうと予想して勢いよく飛び出してきたが ダイちゃんたちはかなり冷静だった。 それどころか逆にしらけているような雰囲気だった。 予想外の反応に焦った巨人は、 「どうした?驚いて声も出ないか。」 するとダイちゃんが、 「あのさー、僕たちいろんなとこ旅してきてこういう状況に何度も あってんだよね。 そして、こういうとこで突然出てくる巨人って 弱いやつって決まってんの。 逆にやられない内に帰った方がいいよ。」 巨人は、 「な、なんだと。わしをバカにしてるな!お前らこそこの道を来たことを後悔するんジャー!」 第818話 巨人がそう言った後、ダイちゃんたちを見ると何やら集まって相談 しているようだった。 「あんなことを言っても、やはり怖いのジャー。」 するとその中からダイちゃんが、 「そんなわけないだろ。もういい加減倒すのもめんどくさいから、 どうやってやり過ごすか相談してたんだよ。」 「そんなことをしても無駄なのジャー。今から注目するのジャー。」 巨人は何やらポーズをとると、ぴかっと光り、2人に分裂した。 1人目を巨人1号、2人目を2号としよう。巨人1号と2号はダイちゃん、 部長たちの両側にそれぞれ立った。巨人1号は、 「挟み撃ちなのジャー。」 2号は、 「これで逃げることも出来ないのジャー。」 再び巨人1号 「降参するのなら今のうちなのジャー。」 もちろん、そんなことをしたところでダイちゃんと部長たちはほとんど 無反応だった。そしてダイちゃんは大ちゃんの手のひらから石本を つまみ上げ、何やら言った。 -ぽんっ- 音とともに石本は突然大きくなり、巨人より頭ひとつくらいの背が高い くらいになった。ダイちゃんは、 「このくらいの巨大化なら問題なく出来るみたいだな。わかってるだろ、 いつものやつを……鈍いな、あれに決まってるだろ。」 -ぽぽぽぽほんっ- 音とともに石本は5人に分裂して、巨人1号と2号を取り囲んだ。すると ダイちゃんは、 「僕たちは先に行くから、適当にやっといてよ。」 そう言って石本たちと巨人1号と2号を残して部長たちとともに立ち去った。 第819話 巨人1号と2号は、自分よりでかくなった石本たちをきょろきょろ見上げながら 「お、お前たちも分身の技をもっていたのか。 まぁ、そのくらいはわしもお見通しジャー。」 強がってはいるが、立場を逆転されて明らかに焦っていた。 だが、有利なはずの石本も少し様子がおかしかった。 巨人1号と2号を取り囲んでいた石本5人は、なぜかその場にうずくまってしまった。 石本は、 「ちょっとダイちゃん・・・。 先にお腹の中の僕をどうにかしてよ。」 ダイちゃんのお腹にいるもう1人の石本の苦しみが5人の石本にも伝わってきていたのだ。 だが、ダイちゃんたちはそのことを忘れて先に進んでしまって 石本の声は届かなかった。 巨人1号は、 「なんだ? やはり見掛け倒しなんだな。 体がでかくなっても、5人に増えても、わしにかなわないと悟ったんだな。」 「違うよっ!」 ズウン・・・ 石本5人の中の2人が、苦しみながらも巨人1号と2号に覆いかぶさった。 完全に下敷きになった巨人1号2号は動くこともできなくなった。 石本は、 「この体ならダイちゃんを逆さまに吊り上げて、もう一人の僕を助けられるかも。」 「うん、大きいからすぐに追いつけるしね。」 「こんなやつに構ってられない。 まずは僕を助けないと。」 第820話 一方、こちらは先に進んだダイちゃんと部長たち。しばらくすると うしろのほうからドスドスという足音が聞こえてきた。部長は、 「もうやっつけたみたいだ、予想通りあいつはあんまり強くなかった ようだな。」 後ろを見ていた大ちゃんは、 「あれ?5人いたはずなのに、3人しか戻ってこないよ。」 するとダイちゃんは、 「まったくしょうがないな。あのくらいのやつなら全員戻ってくると 思ってたのに。まあ2人くらい減ったくらいどうってことないけど。」 「それにしてもあの3人、なんか様子が変だな。」 ニショブが言うとおり、石本たち3人は何やら必死でこっちへ向かって くる。部長は、 「誰かに追われているわけでもなさそうだな。おーい石本〜。」 部長が声をかけようとすると石本3人はダイちゃんと部長たちに おいついた。3人のうち2人はダイちゃんの両側に立ったと思うとそれぞれ 右足、左足を持ちダイちゃんを逆さにした。ダイちゃんは、 「おいおまえら、こんなこ……ふがっ!」 残った最後の石本が、ダイちゃんの口を無理やりあけようとする。 普段なら石本たちに命令してやめさせるのだが、それも出来ない。 石本たちは、 「出てきてー、おなかの中の僕。」 「早く出たいって言ってるよー。」 「早く、早く〜。」 部長たちは石本たちの行動にあっけに取られていた。
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